甲状腺の病気について

甲状腺の働き

脳下垂体

甲状腺は首の前、のどぼとけの下にあって蝶々がはねを広げたような形をしています。
正常の甲状腺はほとんど外から触れることはありません。
甲状腺が産成する甲状腺ホルモンは体の働きを調節するとても重要な働きをしています。
糖を分解してエネルギーを産成し、心臓を刺激して脈拍や血圧をあげ、神経活動を活発にします。体の成長にも大切です。
甲状腺ホルモン(検査ではFT3、FT4)が少なくなると脳下垂体から甲状腺刺激ホルモン(TSH)が分泌されて、これが甲状腺を刺激して甲状腺ホルモン産成を促します。
甲状腺の病気には大きく分けると、甲状腺ホルモンが不足するもの(甲状腺機能低下症)と過剰になるもの(甲状腺中毒症)、甲状腺腫瘍があります。
まず最初に機能低下症と中毒症に特徴的な症状をあげます。

症状

機能低下症 中毒症
動悸、息切れ。特に動いた時に悪化。
手や指が細かくふるえる。
皮膚が乾燥してかさかさする。 汗かきで一日中じっとりと汗ばむ。
寒がりで冬に弱く夏に強い。 暑がり
声がかすれたり低くなる。
便秘。 軟便、それまでの便秘の改善。
顔や足のむくみや体重の増加。 食べているのに体重が減る。
過多月経。 女性では無月経、男性では手足の麻痺
精神活動の低下、眠け、物忘れ。
認知症や精神病と間違われる。
いらいら、そわそわする。

つぎにこれらの症状を示す甲状腺の病気を見ていきましょう。

甲状腺機能低下症の原因疾患

  1. 橋本病;中年以降の女性の20人に1人はこの病気といわれるくらいありふれた病気です。甲状腺が腫大するとともに、しだいに甲状腺組織が破壊されて甲状腺ホルモンが作れなくなります。進行すると上記の諸症状があらわれますが、進行は多くの場合とてもゆっくりなので、検診で甲状腺腫を指摘されたり、血液検査で甲状腺ホルモンが低下していることから発見されたりする場合もよくみられます。
  2.  バセドウ病や甲状腺腫瘍のために甲状腺を切除した場合や、脳下垂体に原因があっておこる甲状腺機能低下症、いろいろな薬の副作用で甲状腺機能低下症になることもありますが、頻度は高くありません。
  3.  その他、外来でよく見られるのは昆布の食べ過ぎによる甲状腺機能低下症です。
    昆布をはじめとする海草類にはヨードがたくさん含まれていますが、過剰のヨードは甲状腺の働きを抑えて機能低下症を起こします。健康によかれと思って行った根昆布療法で機能低下症になる人や、都こんぶが大好きでホルモンが低下したおばあさんをよく見かけます。
    イソジンうがい液(ヨード製剤)で頻回にうがいを繰り返しても同じことが起こります。

甲状腺中毒症の原因疾患

  1. バセドウ病;甲状腺刺激ホルモンの代わりにTRAb(抗甲状腺刺激ホルモン受容体抗体)という物質が甲状腺を刺激して、甲状腺ホルモンを過剰に産成します。
    このTRAbは正常の人には存在しません。症状は上に述べた甲状腺中毒症の症状のほかに、甲状腺の腫大と目の症状が特徴的です。まぶたが腫れたり、大きく目を見開いて白目が目立ったりします。適切な治療を受けないと、不整脈や心不全になることもあり危険です。
  2. 無痛性甲状腺炎;バセドウ病や橋本病の人で、甲状腺組織が何らかの理由で壊れたときに、甲状腺内に貯蔵されていたホルモンが一時的に血液中に放出される病気です。
    血液中の甲状腺ホルモンは上昇しますが、甲状腺がホルモンをたくさん作るわけではありません。甲状腺中毒症の症状が見られますが、血液中の甲状腺ホルモンが低下するに従って、2、3ヶ月の経過で自然に軽快します。
    出産の後でおこることが多いので、産後甲状腺炎という別名もあります。名前の通り甲状腺に痛みはありません。
  3. 亜急性甲状腺炎;ウイルスの感染によると考えられています。
    甲状腺の痛み、発熱とともに甲状腺中毒症の症状が現れます。この場合にも甲状腺組織の破壊によりホルモンが上昇するので、甲状腺機能(ホルモンを作る働き)は亢進しません。
    ステロイド剤などの抗炎症剤を用いて治療します。
  4. 妊娠一過性甲状腺機能亢進症;胎盤が産生する絨毛性ゴナドトロピン(HCG)というホルモンが、甲状腺刺激ホルモンの代わりに甲状腺を刺激するために起こります。
    妊娠8-13週ころに甲状腺ホルモンが多くなり、つわりの時期に一致します。
  5. その他;甲状腺ホルモンを産生する腫瘍や、薬剤の副作用でも甲状腺ホルモンが増加することがあります。

甲状腺の腫瘍

甲状腺には年齢とともに様々な”できもの”ができます。ほとんどは良性腫瘍で放置してもなんら問題ありません。一部を除いてホルモンの異常も見られません。
腫瘍の内部に液体がたまって嚢胞という袋状のものができることがあります。
また、甲状腺の大部分が多数の良性腫瘍で占められてしまうこともあります。大きなものは切除しますが、たいていは経過観察するだけでよい。
悪性腫瘍が疑われる場合には、その一部を取って顕微鏡で調べます。甲状腺に発生する癌のほとんどは乳頭腺癌といって比較的進行のゆっくりしたものですが、中には進行の早いものもあるので慎重に調べる必要があります。チェルノブイリの原発事故では、放射性ヨウ素によって子供の甲状腺癌がふえました。

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